a farewell note by radiohots

2019年10月にYahoo!ブログから移行しました。

ギターを弾き続けるはずが、生成サックスとの共演になった──「Techno012」制作記

この記事は note に掲載した記事の転載です。

オリジナル曲「Techno012」をYouTubeで公開しました。シンセの反復を土台に、ギターとサックス音源を組み合わせた、9分超のテクノトラックです。

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最初に考えていたのは、自作のテクノトラックの上で、延々とギターソロを弾き続ける構成でした。しかし、完成した曲ではギターリフをテーマと要所に配置し、ソロは終盤の一箇所に。中盤には、MIDI生成と加工の仕組みを使ったサックスを入れています。

今回は、最初の思いつきがどう変わっていったのか、その制作過程を振り返ります。

テクノの上で、延々とギターを弾くつもりだった

出発点は、かなり単純な思いつきでした。

自分で作ったテクノの反復を土台にして、ギターを即興的に弾き続けてみたい。前半はテーマになるリフを置き、中盤から終盤へ向けてソロを畳み掛ける。ワーミー、リングモジュレーター、ディレイなども使いながら、音色も含めて展開させる構想です。

そのためにコード進行やセクションを考え、Logic Proでトラックを組み始めました。最初の約1分はシンセを中心にして、そこからギターリフが入る流れです。

ただ、長尺の曲を自分のギターフレーズだけで持たせることには、少し懸念もありました。

途中でフレーズのネタが尽きるのではないか。弾き続けることはできても、自分の引き出しだけで変化をつけられるだろうか。

実際に弾いてネタが尽きた、というより、構成を考える段階でそういう心配がありました。

ギターだけではなく、サックスを入れたくなった

一方で、ジャズ的なアプローチとして、サックスを入れたい気持ちも出てきました。

これは、ギターの出番を減らすためだけの代案ではありません。自分でギターを弾くのとは違う方法でフレーズを作り、曲の中に置いてみたいという興味です。

そこで、中盤はサックスを主役にする方向へ進めました。

最終的に、ギターリフはテーマと要所に登場させ、ギターソロは終盤の一箇所に集約しています。最初から最後までギターで押し通すのではなく、シンセ、ギター、サックスへと主役が移り変わる構成になりました。

ただし、サックスの旋律を一音ずつ打ち込んだわけではありません。今回は、自作のジェネレータとLogic ProのMIDI FXを組み合わせて、フレーズに偶発性を持たせています。

コードに沿った素材から、書き出すたびに変わるサックスへ

サックスを鳴らすまでの流れは、次のようになっています。

自作ジェネレータでMIDIファイルを作成→ArpeggiatorのRandomで単音フレーズ化→Scripterで音程とタイミングに変化を加える→サックス音源を鳴らす

まず、和声の土台を用意する

最初に、自作のジェネレータで、コード進行に則したスケール感のあるMIDIファイルを用意しました。

何でも無条件にランダムにするのではなく、出発点にはコード進行に沿った素材を置いています。ただ、このMIDIには和音になる箇所も含まれています。

そこで、サックス音源へそのまま渡す前に、単音のフレーズにする工程を挟みました。

ArpeggiatorのRandomを通す

単音化には、Logic ProのArpeggiatorを使っています。設定はRandomです。

和音を含むMIDIを、音の並びに偶発性のある単音フレーズへ変えてから、次のScripterへ渡します。

元のMIDIに含まれる音を材料にしながらも、あらかじめ旋律として書き込んだものとは異なる並び方を狙いました。

Scripterで、さらに音程とタイミングを変える

Arpeggiatorの後にはScripterを置き、音程とタイミングに、さらに偶発的な変化を加えています。

自作ジェネレータで素材を作り、Arpeggiatorで単音の並びにし、Scripterでさらに変化させる。役割を分けて組み合わせた形です。

コードに沿った素材を用意しながら、その先のフレーズまでは全部決めない。自分でギターを弾くときとは違う動きを、この仕組みで作ろうとしました。

生成した演奏は固定しない

今回、自分の中で重要なのは、ここから先です。

生成されたサックスの演奏は、オーディオ録音もせず、加工後のMIDIとしても記録していません。ArpeggiatorとScripterを動かしたまま、そのまま2MIXを書き出しています。

つまり、書き出すたびにサックスのフレーズが変わります。

生成結果から良いフレーズを選び、それを固定して使う方法もありますが、今回はそうしていません。変化する仕組みを残したまま完成させる。それでよいと思っています。

もちろん、公開したYouTube動画の音声が、再生するたびに変わるわけではありません。公開音源に収まっているのは、その書き出しのときに生まれた一回分の演奏です。

ブレイクと、少しずつ変わるギターリフ

完成した曲は9分を超えました。長尺でも飽きずに聴けて、踊れる雰囲気を目指しています。

そのために意識したのは、主役の交代に加えて、ブレイクを設けることと、コードの変化に合わせてギターリフを微細に変えることでした。

ブレイクでは、続いてきた流れに区切りを作ります。反復を土台にしながらも、曲全体を一続きの同じ景色にはしない、という考えです。

一方、ギターリフはテーマとして要所に戻ってきますが、毎回まったく同じ形を繰り返すだけにはしていません。コードの変化に伴って、少しずつ変えています。

テーマとしてのまとまりは残しながら、その場の和声に合わせる。大きな区切りはブレイクで、小さな変化はリフの中で作る、という整理です。

ドラムの生成にはDrummerを使いました。その上で、シンセ中心の導入、ギターのテーマ、中盤のサックス、終盤のギターソロという流れを組んでいます。

当初はギター演奏の密度を上げて展開させることを考えていましたが、完成形では、何が鳴るかだけでなく、どこで登場し、どこで退くかも構成の一部になりました。

フレーズを固定しないまま、完成にする

今回の制作は、自分のギターで長く弾き続けるという発想から始まりました。

そこに、自分のフレーズの引き出しへの懸念と、ジャズ的なアプローチでサックスを入れたいという興味が加わり、最初とは違う構成になっています。

ギターは自分で演奏する。その一方で、サックスは自分で素材と仕組みを用意しながらも、最終的なフレーズを一音ずつは決めない。二つの作り方を、一曲の中に置くことになりました。

サックスを固定しないのは、後で直すために保留しているわけではありません。書き出すたびに変わる状態を、今回は完成形として受け入れています。

ギターを弾き続けるはずだった曲が、生成されたサックスと主役を交代する曲になった。その変化も含めて、「Techno012」の制作でした。

もう一度書き出せば、サックスはまた違うフレーズになります。公開した「Techno012」は、その仕組みから生まれた一回分です。


元記事はこちら:ギターを弾き続けるはずが、生成サックスとの共演になった──「Techno012」制作記(note)

偶然のループにギターを重ねて——Ambient019制作記

この記事は、noteで公開した記事の転載です。 原文:偶然のループにギターを重ねて——Ambient019制作記

アンビエントの習作シリーズとして、Ambient019を制作しました。名義は、サブチャンネルで使用している「EnC a.k.a OMSG」です。

今回は、Logic Proでモジュラーシンセのような偶発性のあるトラック作りを試したことが出発点になっています。

ただし、生成された音をそのまま流し続けるのではなく、気に入ったループを軸に構成を作り、中盤から終盤にかけてギターソロを重ねました。個人的には、今回の仕上がりを結構気に入っています。

まずは、こちらから聴いていただけると嬉しいです。

Logic Proで偶発性を試す

最初にやってみたかったのは、モジュラーシンセのパッチを動かしているときのように、意図と偶然が混ざり合うトラック作りでした。

そこで今回は、Logic Proの音源とScripterを組み合わせ、確率的なMIDI処理を制作に取り入れています。

細部をすべて決めてから鳴らすのではなく、まず仕組みを作り、その結果を聴きながら調整する。いつもの打ち込みとは少し違う順序で、曲の材料を探していきました。

音源とエフェクトを組み合わせる

イントロや曲中の要所では、Logic ProのSculptureをメインに使っています。今回の曲を紹介するうえでは、この音源による導入も聴いていただきたい部分です。

一方、Alchemyでは録音素材をGranularで取り込み、テクスチャを作りました。そこにScripterによる偶発的な発音を組み合わせています。

音源側の音作りだけでなく、エフェクトにはGlitch BitchやOutput Portalも使いました。今回の音は、ひとつの音源や処理だけで完結させず、こうした道具を組み合わせながら作っています。

ただし、特定のプラグインを紹介するためのデモではありません。生成された音や加工した音を聴きながら、気に入った組み合わせをループに取り込み、曲として組み立てていきました。

32小節のループから構成を作る

制作中は、32小節をループさせながら、音の重なりや発音の密度がちょうどよくなるところを探していました。

Scripterの結果が再生ごとに変わるため、同じ設定でも聴こえ方が変わります。その変化を面白がりつつ、最終的にはループを軸に曲の構成を組み立てる方向へ進めました。

展開の中心にしたのは、トラックの抜き差しです。

音を足すことで厚みを作り、抜くことで、それまでほかの音に隠れていた部分を見せる。同じ反復を使っていても、周囲の音が変わることで、違う場面として聴こえるようにしています。

偶然に任せる部分と、自分で構成を決める部分。その両方を行き来しながら形にした曲です。

中盤から終盤はギターで押し込む

そのループの上に、中盤から終盤にかけてギターソロを入れました。

ここは静かな背景音として馴染ませるというより、畳み掛けるような演奏を重ねています。反復するトラックに対し、ギターで密度と勢いを加える展開です。

生成的な音作りを試しながらも、最後は自分の演奏で曲を動かしたくなる。そのあたりは、普段ロックを中心に聴いたり作ったりしている自分らしいところかもしれません。

イントロのSculptureから、ループの重なり、そしてギターソロへ。その流れを通して聴いていただけると嬉しいです。

映像と公開について

映像はSTAELLAで作成しました。今回は操作を加えながら録画する方法ではなく、Exportで書き出した映像を使っています。

完成した楽曲は、サブチャンネル「EnC a.k.a OMSG」で公開しています。メインチャンネル「OM from Shallow Grass」では機材や制作の話を、サブではこうした実験的な楽曲を中心に発信しています。

www.youtube.com

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イントロの雰囲気やギターソロ部分を切り出したShortも公開しましたが、本編では、その前後も含めた展開を聴いていただけます。

アンビエントや実験的なインスト、ギターのある音楽が好きな方に届けば嬉しいです。

AIと音楽制作の距離感について、noteに書いた

AIと音楽制作の距離感について、noteに書いた。

自分は、AIに曲を丸ごと作らせたいわけではない。Logic Pro Scripterで使う確率処理コードの雛形を出してもらうことはあっても、動作確認、改変、音楽的な採否、作品として公開する責任は自分で持つ。

偶然を増やすことではなく、偶然が音楽になる条件を設計したい。

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シンセ=PCMではない。ES2、Mother-32、microKORGから考える音の作り方

「シンセ」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。

ピアノ、ストリングス、ブラス、ベル、ドラムなど、多数の音色を内蔵したキーボードを思い浮かべる人は多いかもしれません。こうしたイメージの中心には、PCM音源を使ったシンセやワークステーションがあります。

もちろん、それは正しいシンセの姿です。

ただ、私自身は「シンセ」と聞くと、先にオシレーター、フィルター、エンベロープを思い浮かべます。ノコギリ波や矩形波のような波形を鳴らし、フィルターで倍音を整え、音量や明るさの時間変化を作る。アナログ減算シンセ的な発想です。

この二つのイメージは対立するものではありません。そもそも、PCMはシンセサイザーそのものを指す言葉ではなく、シンセの音を作る方式の一つです。

PCMは録音素材を使うシンセです

PCMシンセは、ピアノ、ストリングス、ドラム、効果音などの録音データを音の素材にします。

そのため、実在楽器に近い音、複雑なアタック、自然な響きを扱いやすいことが強みです。バンドのデモを素早く組み立てるときも、打ち込みのアレンジを作るときも、PCM音源は非常に頼りになります。

ただしPCMシンセは、単純な再生機ではありません。

サンプルを鳴らしたあとに、フィルター、アンプ、エンベロープ、LFO、エフェクト、レイヤーなどを使い、演奏可能な音色として組み立てていきます。PCMもまた、十分に音作りができるシンセです。

一方で、アナログ減算、FM、ウェーブテーブル、物理モデリング、グラニュラーなど、PCMとは別の出発点を持つシンセもあります。

「シンセ=PCMではない」と言いたいのは、PCMを否定したいからではありません。PCMも含めて、シンセには複数の音作りの方法がある、と整理したいのです。

ES2だけで曲を作ってみました

このことを考えるきっかけになったのが、Logic Pro付属のES2だけを使った制作です。

ES2は、オシレーター、フィルター、エンベロープ、LFO、モジュレーションを組み合わせて音を作るソフトシンセです。減算合成を中心にしながら、FMやウェーブテーブル的な要素も扱えるため、単に「アナログっぽい音」を作るだけでは終わりません。

今回、ES2だけを使って一曲を作ってみました。

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ベース、パッド、短いフレーズ、ノイズ的な音、背景で変化するテクスチャなどを、すべて同じES2から組み立てています。

ここで試したかったのは、「PCMを使わないほうが良い」ということではありません。限られた音源でも、波形を選び、フィルターを動かし、エンベロープと変調を設計していくことで、曲の中で必要な役割を作れることを確かめたかったのです。

手元の2台もPCMではありません

手元には、ES2とは異なる方向性を持つハードシンセもあります。

MOOG Mother-32は、アナログのモノフォニック・セミモジュラーシンセです。VCO、フィルター、エンベロープ、LFO、32ステップのシーケンサーを備え、パッチベイでは音声信号やCVの経路を拡張できます。

Mother-32の魅力は、太いベースや短いシーケンスだけではありません。フィルター発振、ノイズ、短いエンベロープ、パッチングを組み合わせると、荒いリズム、グリッチ的な素材、パルス波を使ったドローンまで作れます。音色を選ぶというより、音がどう動くか、どの程度予測不能にするかを作る楽器だと感じます。

KORG microKORGは、DSPによるアナログモデリング方式を採用したバーチャルアナログシンセです。コンパクトなボディながら、シンセ、エフェクト、アルペジエーター、ボコーダーを備えています。

microKORGには多数のプリセットがありますが、音の核はPCMサンプルではなく、オシレーター、フィルター、アンプ、エンベロープ、LFOの組み合わせです。プリセットを呼び出してすぐ弾ける手軽さがありながら、フィルターやエンベロープを調整すれば、曲の中での役割を大きく変えられます。

Mother-32が単音の濃いアナログ感やパッチングの偶発性に向くなら、microKORGは和音パッド、リード、アルペジオ、ボコーダーまで、曲の中の複数の役割を一台で素早く作るのに向いています。

方式より、曲の中の役割

PCMシンセ、ES2、Mother-32、microKORGのどれが優れているか、という話ではありません。

ピアノやストリングス、自然なブラス、実在感のある楽器音が必要なら、PCM音源は強力です。ES2のようなソフトシンセは、曲の中で少しずつ変化するパッド、ベース、ノイズ、アルペジオを作るのに向いています。

Mother-32は、シーケンス、アナログベース、ドローン、荒いリズム素材に使えます。microKORGは、和音、リード、ボコーダー、即戦力のシンセ音をまとめるのに便利です。

大事なのは、「どの方式か」だけではなく、曲の中で何を担当させたいかだと思います。

音の芯が欲しいのか。動き続ける背景が欲しいのか。楽器らしい質感が必要なのか。人工的で不安定な音が欲しいのか。

そう考えると、PCMもアナログもバーチャルアナログも、競合する存在ではなく、制作の中で役割を分けて補い合う道具になります。

noteに本編を書きました

今回の話は、noteではもう少し詳しく整理しています。

PCMシンセの位置づけ、アナログ減算やFMなどの方式の違い、Logic Pro ES2だけで曲を作った話、MOOG Mother-32とKORG microKORGについても、写真を交えて書きました。

本編はこちらです。

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PCMは、シンセサイザーの広い世界の中にある、重要で実用的な一方式です。

そして、ES2、Mother-32、microKORGのようなシンセに触れると、録音された素材を扱う以外にも、波形を作る、倍音を削る、時間の中で音を変化させる、信号経路を組み替えるといった、別の音作りの楽しさが見えてきます。

「The Wall」MVをYouTubeに公開しました|既発表曲をあらためて映像化するまで

当方のアーティスト名義「OM from Shallow Grass」の楽曲「The Wall」のMVを、YouTubeに公開しました。

この曲はすでにBandcampで公開していたのですが、後から何度も聴き直すうちに、音源だけとは別の形でも残したいと思うようになりました。先に後続の楽曲でMV制作を試したこともあり、「The Wall」にも映像を付けてみたいと考えました。

まずは、映像と一緒に聴いていただけたらうれしいです。

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曲の制作経緯:2年前の着手から正式版公開まで

「The Wall」は、およそ2年前に作り始めた曲です。

最初から現在の形が見えていたわけではありません。曲としてはある程度できていても、アレンジや音色、全体のバランスを聴き直すたびに気になる部分が出てきました。そのたびに大きく作り直すのではなく、小さなアップデートを重ねながら、少しずつ自分の中で納得できる状態へ近づけていきました。

そうした調整を経て、今年1月にBandcampで正式版として公開しました。

公開した後も、ときどきこの曲を聴き直していました。制作中には見えなかったことが、時間を置くと見える場合があります。後続曲のMVを作る中で、音楽に映像が重なることで、曲の印象や入口が少し変わることも実感しました。

「The Wall」も、音源として公開して終わりにするのではなく、今の段階でもう一度向き合ってみたいと思いました。今回のMVは、その延長線上にあります。

なお、曲の背景や歌詞に込めた感覚については、noteにも書きました。迷いながら進んだ時間や、「Wall」という言葉から考えていたことに興味があれば、こちらも読んでいただけるとうれしいです。

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 ギターと打ち込みで組み立てた歌もの

「The Wall」は、ロックを基調にした歌ものです。ただし、分かりやすいポップスの型へそのまま収めることよりも、ギターと打ち込みの質感が共存する音を作りたいと思っていました。

ギターとボーカルは自分で演奏・録音し、それ以外のパートはすべて打ち込みで構成しています。

ギターはすべてライン録音です。主な音作りには、Positive Grid BIAS FX 2 MOBILEを使いました。アンプをマイキングする録音とは違い、ライン録音では、後から音色や空間系の処理を見直しやすいところが自分の制作環境に合っています。

宅録では、ギター単体で良く聴こえる音と、曲の中で役割を果たす音が一致しないことも多いです。「The Wall」でも、ギターを前へ出しすぎるとボーカルやシンセの居場所が狭くなり、逆に整えすぎるとロックらしい手触りが薄くなってしまいます。その間を探りながら、演奏の揺れやニュアンスを残しつつ、打ち込みと混ざる位置を考えました。

シンセには、microKORGとLogic Pro標準のES2を使っています。microKORGには、ソフトシンセだけでは均一になりがちな音像に、少し手触りや不安定さを加える役割を期待しました。一方、ES2はアレンジの中で必要な音を細かく配置し、曲全体の密度を調整するために使っています。

ドラムはBFD3です。ロックの骨格を残しながら、打ち込みのパートとも違和感なく共存できるように組み立てました。生演奏らしさを再現することだけを目的にするのではなく、ギター、シンセ、ボーカルの間に必要な推進力を置く意識で使っています。

「Wall」をMVにする

MVでは、タイトルにある「Wall」、つまり壁をモチーフにしました。

ただし、具体的な壁をそのまま映すのではなく、壁から連想したイメージを抽象化した画像として使っています。壁には、隔たりや閉塞感、進行を妨げるものといった意味があります。一方で、壁は空間を作る構造でもあり、何かを築くための要素でもあります。

楽曲を作っていたときから、この言葉には一つの意味だけを与えたくありませんでした。映像でも同じように、見た人がそれぞれの状況や感情を重ねられる余白を残せればと思いました。

映像制作には、STAELLA VISUALIZERとPremiere Proを使っています。STAELLA VISUALIZERで映像の素材や動きのベースを作り、Premiere Proで曲に合わせた編集を行いました。

Premiere Proは、まだまだ勉強中です。頭の中にあるイメージを、そのまま編集画面上で実現できるほど使いこなせているわけではありません。それでも、音に合わせて画面の変化や切り替わるタイミングを調整していく作業は、曲作りとは違う角度から楽曲を聴き直す時間になりました。

既発表曲に映像を付けることは、単に宣伝素材を増やす作業ではありませんでした。音源だけで聴いていた曲に、別のテンポや視線を与えることでもあります。制作当時とは少し違う自分の感覚で、「The Wall」をもう一度組み立て直すような作業でした。

YouTube、Bandcamp、noteの入口

今回のMVは、YouTubeで公開しています。映像と一緒に「The Wall」を聴いていただけたらうれしいです。気に入っていただけた場合は、チャンネル登録もしていただけると、今後のMVや演奏・制作動画を続ける励みになります。

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音源はBandcampで公開しています。映像なしで繰り返し聴きたい方、購入して手元に置きたい方、今後のリリースも追っていただける方は、ぜひBandcampも覗いてみてください。

omfromshallowgrass.bandcamp.com

曲の背景や歌詞に込めた感覚については、noteにまとめました。

note.com

今回の気づき:公開後の曲にも、まだできることがある

「The Wall」は、着手から正式版の公開までに時間がかかった曲です。そして今回、公開済みの曲にMVを作ったことで、完成したと思っていた作品にも、別の向き合い方が残っていると感じました。

公開した音源を大きく作り変える必要はなくても、映像を付ける、演奏動画にする、制作環境を記録するなど、作品を別の入口から見せる方法はあります。公開後に作品を育て直すことも、今の自分にとっては制作の一部なのだと思います。

次に作る曲では、完成してから映像を考えるだけでなく、制作の早い段階から音と映像の関係を少し意識してみたいです。まだ試行錯誤の途中ですが、次の作品でもまた新しい形を探していきます。

4曲入りEP「Quiet Bandwidth」をBandcampでリリースしました

4曲入りEP「Quiet Bandwidth」をBandcampでリリースしました。

omfromshallowgrass.bandcamp.com

今回は、4曲をひとつのまとまりとして聴けるように、
曲順、曲間、音量感、音色のバランスまで含めて仕上げています。

EPについて

「Quiet Bandwidth」は、「情報過多に疲弊した都会の中で静けさを見出すこと」を起点に制作した4曲入りのEPです。

ギター、アンビエント、エレクトロニック、実験音楽などを軸にしながら、
各曲では音の対比、リズム、空間処理などの違いが出るように構成しました。

単曲としても聴けますが、1曲目から4曲目まで順に再生したときに、
「余韻が残る流れ」を感じてもらえればと思います。

制作とマスタリング

制作・ミックス・マスタリングはすべて自分で行いました。

最終調整はStudio OneのProject機能で進めています。
単に各曲の音圧をそろえるだけではなく、EPとして続けて再生した際に、
低域の量感、ギターの存在感、高域の質感、曲間の空気感が極端に変わらないことを意識しました。

配信・ダウンロード用のマスターは48 kHz / 24-bit WAVで出力しています。
Bandcampではロスレス・ダウンロードを有効にしているので、
気に入っていただけたら、ぜひ高音質版も手元に置いてもらえるとうれしいです。

クレジット

- Title: Quiet Bandwidth
- Artist: OM from Shallow Grass
- Release date: 2026/8/7
- Written, performed, recorded, mixed and mastered by OM from Shallow Grass
- Artwork: OM from Shallow Grass

© 2026 OM from Shallow Grass. All rights reserved.

聴く/購入する

Bandcamp:

omfromshallowgrass.bandcamp.com

今後、各曲の制作メモ、使用した機材や音作りについても、こちらやnote等に書ければと思います。

【note】Seymour Duncan Antiquity Texas Hot、最初は地味だと思っていた

先日、noteの方に機材ネタを一本書きました。

うちのEDWARDS(E-SE-145Rというストラトタイプ)には、Seymour DuncanのAntiquity Texas Hotというピックアップが標準搭載されています。今振り返ると結構贅沢な仕様なんですが、正直、最初はその価値に全然気づいていませんでした。

「あれ、思ったより普通じゃん」というのが第一印象。ビンテージ系シングルコイルらしい、枯れた方向の音で、載せた瞬間に何かが変わるタイプではなかったんですよね。

そこからブリッジまわりを見直したり、トレモロスプリングを替えたり、何より弾き方(ピッキングの角度や深さ)を詰めていくうちに、少しずつこのピックアップの本当の姿が見えてきました。枯れているのに芯が残る、エフェクトにも意外と乗る——このバランスの良さに気づくまでの過程を書いています。

ピックアップの価格がここ数年でかなり上がっている今、標準搭載だったことのありがたみも含めて振り返った内容です。ギター・宅録好きの方は良ければどうぞ。

▼ 記事はこちら
note.com