この記事は note に掲載した記事の転載です。
オリジナル曲「Techno012」をYouTubeで公開しました。シンセの反復を土台に、ギターとサックス音源を組み合わせた、9分超のテクノトラックです。
最初に考えていたのは、自作のテクノトラックの上で、延々とギターソロを弾き続ける構成でした。しかし、完成した曲ではギターリフをテーマと要所に配置し、ソロは終盤の一箇所に。中盤には、MIDI生成と加工の仕組みを使ったサックスを入れています。
今回は、最初の思いつきがどう変わっていったのか、その制作過程を振り返ります。
テクノの上で、延々とギターを弾くつもりだった
出発点は、かなり単純な思いつきでした。
自分で作ったテクノの反復を土台にして、ギターを即興的に弾き続けてみたい。前半はテーマになるリフを置き、中盤から終盤へ向けてソロを畳み掛ける。ワーミー、リングモジュレーター、ディレイなども使いながら、音色も含めて展開させる構想です。
そのためにコード進行やセクションを考え、Logic Proでトラックを組み始めました。最初の約1分はシンセを中心にして、そこからギターリフが入る流れです。
ただ、長尺の曲を自分のギターフレーズだけで持たせることには、少し懸念もありました。
途中でフレーズのネタが尽きるのではないか。弾き続けることはできても、自分の引き出しだけで変化をつけられるだろうか。
実際に弾いてネタが尽きた、というより、構成を考える段階でそういう心配がありました。
ギターだけではなく、サックスを入れたくなった
一方で、ジャズ的なアプローチとして、サックスを入れたい気持ちも出てきました。
これは、ギターの出番を減らすためだけの代案ではありません。自分でギターを弾くのとは違う方法でフレーズを作り、曲の中に置いてみたいという興味です。
そこで、中盤はサックスを主役にする方向へ進めました。
最終的に、ギターリフはテーマと要所に登場させ、ギターソロは終盤の一箇所に集約しています。最初から最後までギターで押し通すのではなく、シンセ、ギター、サックスへと主役が移り変わる構成になりました。
ただし、サックスの旋律を一音ずつ打ち込んだわけではありません。今回は、自作のジェネレータとLogic ProのMIDI FXを組み合わせて、フレーズに偶発性を持たせています。
コードに沿った素材から、書き出すたびに変わるサックスへ
サックスを鳴らすまでの流れは、次のようになっています。
自作ジェネレータでMIDIファイルを作成→ArpeggiatorのRandomで単音フレーズ化→Scripterで音程とタイミングに変化を加える→サックス音源を鳴らす
まず、和声の土台を用意する
最初に、自作のジェネレータで、コード進行に則したスケール感のあるMIDIファイルを用意しました。
何でも無条件にランダムにするのではなく、出発点にはコード進行に沿った素材を置いています。ただ、このMIDIには和音になる箇所も含まれています。
そこで、サックス音源へそのまま渡す前に、単音のフレーズにする工程を挟みました。
ArpeggiatorのRandomを通す
単音化には、Logic ProのArpeggiatorを使っています。設定はRandomです。
和音を含むMIDIを、音の並びに偶発性のある単音フレーズへ変えてから、次のScripterへ渡します。
元のMIDIに含まれる音を材料にしながらも、あらかじめ旋律として書き込んだものとは異なる並び方を狙いました。
Scripterで、さらに音程とタイミングを変える
Arpeggiatorの後にはScripterを置き、音程とタイミングに、さらに偶発的な変化を加えています。
自作ジェネレータで素材を作り、Arpeggiatorで単音の並びにし、Scripterでさらに変化させる。役割を分けて組み合わせた形です。
コードに沿った素材を用意しながら、その先のフレーズまでは全部決めない。自分でギターを弾くときとは違う動きを、この仕組みで作ろうとしました。
生成した演奏は固定しない
今回、自分の中で重要なのは、ここから先です。
生成されたサックスの演奏は、オーディオ録音もせず、加工後のMIDIとしても記録していません。ArpeggiatorとScripterを動かしたまま、そのまま2MIXを書き出しています。
つまり、書き出すたびにサックスのフレーズが変わります。
生成結果から良いフレーズを選び、それを固定して使う方法もありますが、今回はそうしていません。変化する仕組みを残したまま完成させる。それでよいと思っています。
もちろん、公開したYouTube動画の音声が、再生するたびに変わるわけではありません。公開音源に収まっているのは、その書き出しのときに生まれた一回分の演奏です。
ブレイクと、少しずつ変わるギターリフ
完成した曲は9分を超えました。長尺でも飽きずに聴けて、踊れる雰囲気を目指しています。
そのために意識したのは、主役の交代に加えて、ブレイクを設けることと、コードの変化に合わせてギターリフを微細に変えることでした。
ブレイクでは、続いてきた流れに区切りを作ります。反復を土台にしながらも、曲全体を一続きの同じ景色にはしない、という考えです。
一方、ギターリフはテーマとして要所に戻ってきますが、毎回まったく同じ形を繰り返すだけにはしていません。コードの変化に伴って、少しずつ変えています。
テーマとしてのまとまりは残しながら、その場の和声に合わせる。大きな区切りはブレイクで、小さな変化はリフの中で作る、という整理です。
ドラムの生成にはDrummerを使いました。その上で、シンセ中心の導入、ギターのテーマ、中盤のサックス、終盤のギターソロという流れを組んでいます。
当初はギター演奏の密度を上げて展開させることを考えていましたが、完成形では、何が鳴るかだけでなく、どこで登場し、どこで退くかも構成の一部になりました。
フレーズを固定しないまま、完成にする
今回の制作は、自分のギターで長く弾き続けるという発想から始まりました。
そこに、自分のフレーズの引き出しへの懸念と、ジャズ的なアプローチでサックスを入れたいという興味が加わり、最初とは違う構成になっています。
ギターは自分で演奏する。その一方で、サックスは自分で素材と仕組みを用意しながらも、最終的なフレーズを一音ずつは決めない。二つの作り方を、一曲の中に置くことになりました。
サックスを固定しないのは、後で直すために保留しているわけではありません。書き出すたびに変わる状態を、今回は完成形として受け入れています。
ギターを弾き続けるはずだった曲が、生成されたサックスと主役を交代する曲になった。その変化も含めて、「Techno012」の制作でした。
もう一度書き出せば、サックスはまた違うフレーズになります。公開した「Techno012」は、その仕組みから生まれた一回分です。