a farewell note by radiohots

2019年10月にYahoo!ブログから移行しました。

『幻想の花』BUCK-TICK ~価値向上!~

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ベスト盤というものがある。
アーティストが活動の軌跡を振り返る意味が強く、
ある一定期間におけるシングルを纏めて編み込むものである。

リスナーにとっても、懐古というかそのアーティストの軌跡を辿る上では
これほど理にかなったものはない、というアイテムのひとつである。

しかしながら、熱心なリスナーであれば、シングル含めアーティストの
楽曲に既に触れているわけで、ただ過去のシングルを寄せ集めたような編成に
なってしまうと、とかくコレクターズアイテムというランクになってしまうのも
また事実。

BUCK-TICKが、現在の所属レーベルBMGファンハウスに移って早5年。
そろそろベスト盤も、というような雰囲気もあるが、これまでリリースしてきた
アルバム3枚(間もなく4枚目がリリースされるが)どれも、世界観が異なり、
同アーティストが制作したものとは思えない、といった部分がある。
そういった最中、放たれたシングル群は、各アルバムの一片を切り取ったものとなっており、
例えばこれらのシングル群でベスト盤を編纂すると、混沌とした印象を受ける懸念がある。
そういった意味では、まだベスト盤を出すのは時期尚早というか、どうせ編むなら
未発表曲収録などのお得感が欲しい、というのが私の個人的な見解である。

そう考えたときに(やっと本題)、非常に重要になってくるのが、今回紹介する「幻想の花」である。
本曲は、13th ALBUM『Mona Lisa OVERDRIVE』の後に、シングルカットではなく、
まったくの新曲としてリリースされている。なおかつ、今度リリースされる
14th ALBUM『十三階は月光』にも未収録である。
つまり、「幻想の花」は、この1枚でひとつの作品としての地位を確立することになる。

「幻想の花」は、もう一人のコンポーザー、星野英彦による楽曲。
「JUPITER」「ドレス」といった傑作を残し、B-Tの別の側面を覗かせてくれる。
「幻想の花」も過去の名曲同様、星野ワールド全開の中であって、かつ、今のB-Tが
しっかりと息づいている楽曲であろう。

しかし私がもっと驚いたのは、カップリングに据えられた「ノクターン -RAIN SONG-」なのである。
今井寿の新世界、ひいてはB-Tにおいても新たな世界を切り開く要因となるべき楽曲である。

本盤リリース後、メンバー各々のソロ活動が始まる。それを経て今回の新アルバムのリリース。「幻想の花」が選曲から漏れた要因は、やはりアルバムのコンセプトとは合わないのか、など、様々な推測をしてしまうが、いずれにせよ、『十三階は月光』リリース後、「幻想の花」は一作品としての、地位を確立・向上させることになる。

ということで、私の意見としては、先述のように、ベスト盤は暫くリリースせず(当面なくてよし)、
「幻想の花」の地位を見守っていきたい。
「月世界」「BRAN-NEW LOVER」「ミウ」のように、あの悲惨なベスト盤に
封じ込められ、価値を落とすことの無いように…。
切に願います。