a farewell note by radiohots

2019年10月にYahoo!ブログから移行しました。

今井寿と星野英彦~互いに磨かれる巨星~

今井寿と星野英彦。
もはや説明不要とも言える、BUCK-TICKのコンポーザー二大巨頭。
今井寿櫻井敦司との連名曲「デタラメ野郎」を除けば、
今井・星野の手による楽曲は100%となる。
20年もの間、バンドを牽引してきたこの2人について、
勝手に考察していこうかと思う。

今井寿は、B-Tデビュー当時から、ほぼ全ての楽曲を作曲し、
メインコンポーザーの地位を築いていた。
現在までにリリースされている音源は、各曲ともそれぞれ特徴があり、
なかなか共通項を見出せない。こうした面からも、ズバ抜けた作曲センスを
持っていると言えよう。

一方星野英彦は、2nd『SEVENTH HEAVEN』から自身作曲の楽曲提供をしている。
曲調自体はオーソドックスなものであり、一聴しても今井・星野の
どちらが書いたのかが分からなかった。
ここでの星野のスタンスとしては、アルバムコンセプト、つまりは、
「今井コンセプトに乗り入れる」ような形を取っていたのではないだろうか?
残念ながら、4th『悪の華』までの星野作品に於いて突出した楽曲を見出すことは難しい。

星野英彦、そしてB-Tにとって転機となったのは、初の星野作曲のシングル
「JUPITER」ではないだろうか?
12弦ギターの積極的な導入、起伏のない緩やかなコード進行、
その中に溢れる極上のメロディなどなど、
そののち発表される星野作品のキーワードを全て網羅した原点とも言える楽曲である。
この曲により、今井と並ぶメインコンポーザーの地位を築いたと言ってもよい。

「起伏のない緩やかなコード進行、その中に溢れる極上のメロディ」
これが言わば星野の真骨頂である。
『Six/Nine』収録の「密室」は、たった2つのコードで構成されている。
『COSMOS』収録の「チョコレート」に至っては、たった1つのコード(!)である。
単調化しがちな構成を、綺麗なメロディラインと大胆なアレンジで補完することにより、
楽曲のレベルを大幅に引き上げることに成功している。
こういった積極的なアプローチから、一筋縄では行かない星野のセンスを垣間見ることができる。

近年興味深く感じられるのは、星野のこうした手法を、今井寿が取り入れている点である。
最近の音源には、星野作品と思いきや実は今井作品だった、というものが
いくつかある。
(「カイン」、「WARP DAY」etc.)
これは、星野が初期に取っていたと思われる、
「今井コンセプトに乗り入れる」
というスタンスと紐付けられないだろうか?
ここに来て、唯我独尊:今井寿が、他の要素を受け入れる姿勢を見せ始めたのだ。
こうした今井の発展的転換に、非常に共感することができた。

お互いが切磋琢磨し合い成長することにより、20年もの間マンネリ化することなく、
積極的な楽曲を提供し続けている。
こういったスタンスをお互いが保ち続けることができれば、
B-Tが崩壊する、ということはまず有り得ないだろう。

超大型戦闘機BUCK-TICKの両翼、今井寿と星野英彦。
その翼は折れることなく、これからも進化を続ける…。